2009年01月25日

■第1期−第1回大平建築宿(1994)

 山村宿場の遺構を残す大平宿は、1960年に住民が集団移住した後、飯田市民を中心とするボランティア運動で保存再生を図ってきました。当初からこの運動に多くの人達と関わってきた一人としては、飯田市が実施した今回の保存改修事業は、大平もようやくここまできたか、という感慨がひとしおです。しかしまだ保存再生の永続的なレールが敷かれたわけではありません。

 今年はその第1回を企画し、これを毎年開催してゆこうと考えている「大平建築宿」は、大平の保存再生をより確かなものにすることを狙いとしていますが、このイベントそのものの目的としては、歴史的な遺構を残す集落という願ってもない環境の中で、風土の一部をなす建築のあり方を、保存と創造の問題としてとらえ、そうした永遠のテーマについて討論し、自分達の仕事の質を向上させたいところにあります。大平宿の過去と現在については、詳しくは「住宅建築」誌の5月号に特集されていますが、今回の保存改修事業に関わった「大平宿設計会議」が事業の完結をもって解散し、新しく「歴史環境設計会議」として、より広い分野で活動しようとしています。

 このイベントを主催する「生活文化同人」は、メンバー的にはこれとかなりダプっておりますが、建築とか設計とかの範囲を越え、もっと広い生活文化という視点で活動している団体です。大平建築宿についての興味からでも結構ですし、歴史環境についての関心、あるいはまた風土と建築の関わり、そうした中で建築はどうつくるべきか、などなど、人によって関心や中身の程度はさまぎまですが、2泊3日合宿してのこのイベントはきっと楽しいものになるはずです。

(生活文化同人代表 吉田桂二)
 
第1回大平建築宿への期待・・・吉田 桂二 

 私が大平と出会った時は、高度経済成長期の真っ直中であった。民家が好きで、それらが急速に消えていくのを惜しむという心情だけで、駆け廻るかのように多くの民家を見て歩くうち、殆ど偶然大平と出会った。この集落を残したいというその時の思いは、民家保存の意義とか、町並み保存運動とか、いわんや町づくり、地域づくりに至る意識などとはまるで無縁だった。

 その頃の私の仕事の主体は、住宅産業の一部を担っていたようなもので、年間数十棟にも及ぶ多数の注文住宅の設計に追われていたが、大平との関わりはそうした自分の仕事と保存とが矛盾しているのではないか、という自分自身に対する問いかけとなった。

 どんな仕事をするべきかの問いかけは、保存と創造とは連続的なものという認識を生み、その後の仕事は対象も内容も急速に変化した。私にとって「大平が原点」であるという意味は、こうした事情による。

 しかし既に時代は確実に動いた。民家や町並みの保存を単なるノスタルジックな心情とか、年寄りじみた趣味の世界、或いは暇人の遊びと考えている人は今や珍しいと言ってもよい。いわんや「大平建築宿」に参集してくる人たちの認識がそんなところにあるはずはない。歴史的遺産と自分の仕事との接点をどう見出してゆくのか、そうした命題を自分自身に問いかけつつ、同種の命題に取り組んでいる人達との出会いを通じて、新たな糧を求めようとしているに違いなかろう。

 命題は同種であっても関心の所在の如何によって回答は多岐にわたる。どこに接点を求めるのか、どんなことをそこに見出すのか、それは各人各様であるはずだ。「大平建築宿」での多くの人達との出会いは、そうしたさまざまにふれることによって、参加する人達自身の視野をさらに拡大させ、充実させるであろう。

 この「大平建築宿」を第1回と銘した意味は、そうした命題を持ちつつ歩む日常的な仕事の苦心や成果を、毎年回を重ねるごとに高め合いたい、そんな願を込めてであるし、それがこの「大平建築宿」への期待でもある。今、開催が半月後に迫って思うことは、歴史は決して繰り返すことがない、ということの確かな手応えである。

(生活文化同人会報1994(平成6)年7月号・No.8掲載)



生活文化同人会報(1994-09)掲載
第1回大平建築宿の参加者の感想
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posted by 生活文化 at 04:02 | 第1期−大平建築宿(94-03) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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